体験談・エピソード集

「できる子」でいなければ、居場所がなかった

仮名:由里 (30代女性)

私の家では、100点以外は「悪」でした。

テストで一人でも順位が下がると、「そんな成績で家にいる資格はない」と言われ、家の外に追い出されました。

行くところがなく、マンションの裏手で、ただじっと時間をやり過ごしていました。
それでも、その時間が「もったいない」と感じて、教科書を開き、暗くなるまで読み続けていた記憶があります。

勉強をしていない自分には、価値がないように思えていました。

中学受験も、高校受験も、大学受験も、すべて親の決めた道でした。
自分がどうしたいかを考えたことは、ほとんどありません。

大学受験で、第一志望に合格できなかったとき、兄と比較されて、母から「みっともない」と言われました。
その言葉は、今でも心に残っています。

就職も、親の希望する職に就きました。
「良い会社に入れたのだから、ありがたいと思いなさい」
そう言われていました。

職場では、特に女性の上司からの叱責が、怖くて仕方ありませんでした。
声を荒げられると、頭が真っ白になり、体が固まってしまうことがありました。

今振り返ると、あれは、過去の体験が呼び起こされる反応だったのだと思います(女性上司が、母親のように見えたのかも知れません)。

失敗することが、自分の存在そのものを否定されることのように感じられて、
常に完璧でいなければならない、という考えに縛られていました。

「お金をかけて教育してもらったのだから、不満を言う資格はない」
そう思い込んで、苦しさを感じている自分を、長い間否定してきました。

そんな中、SNSで「教育虐待」という言葉を目にしました。
最初は、自分には関係ないと思いました。

でも、調べていくうちに、書かれていることが、あまりにも自分の経験と重なっていることに気づきました。

「苦しいと言ってよかったんだ」
そう思えたことは、私にとって大きな出来事でした。

その後、自分で調べて、精神科の受診にもつながりました。
これまで当たり前だと思っていた考え方が、過去の環境から身についたものだったと知り、少しずつ、自分を責める気持ちが緩んでいきました。

親によって決められた職場は、昨年、辞めることができました。
とても勇気が必要でしたが、「自分で決める」という経験を初めて持てた気がします。

今は、資格試験の合格を目指して勉強しています。
これまでとは違い、自分の意思で選んだ勉強です。

まだ不安はあります。
それでも、これからは、自分の道を歩みなおしていける。
そんな感覚を、少しずつ持てるようになってきました。

今、悩んでいる人へ

もし、「ちゃんとできているか」でしか自分の価値を測れないまま大人になった人がいたら、伝えたいです。

私も、苦しいと感じること自体が、間違いだと思って生きてきました。

でも、どれだけ頑張ってきたとしても、苦しかった事実が消えるわけではありません。

あなたが感じているつらさにも、理由があるかもしれません。
それを知ることは、甘えではないと、今は思っています。

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